畳の掃除

畳の表面に黒ずみが出てきたら、それはカビが発生している証拠です。そのまま放置していると、カビ菌から出る胞子が空気中に舞い、呼吸と同時に胞子を吸い込んでしまうことになります。小さい子どもや高齢者の方は抵抗力が弱いので、健康被害に及んでしまいがちです。最悪な状態になる前に、黒ずみを見つけたらすぐにカビを除去しなければなりませんが、どのような方法で掃除をすればいいのか悩む方が多いでしょう。

そこで本記事では、畳にカビが発生したときの対処法と予防策などについて解説します。

  1. 畳にカビが発生する原因は?
  2. 畳にカビが発生したときの対処法
  3. やってはいけない畳の掃除・手入れ方法
  4. 畳のカビを予防するポイント
  5. カビがひどい場合は畳替えがおすすめ
  6. 畳のカビに関してよくある質問

この記事を読むことで、畳のカビを除去する方法と予防策などが分かります。畳の黒ずみが気になっている方は、ぜひ参考にしてください。

1.畳にカビが発生する原因は?

日本独特の文化である「畳」は、目に見えないカビが発生しやすいものでもあります。なぜ、畳にカビが発生するのか原因を追求して行きましょう。

1-1.カビは畳表(天然い草)に発生する

畳に発生するカビは、全体ではなく畳表に発生するケースがほとんどです。畳表とは、い草の茎などや麻糸で織ったゴザのことで畳の表面に縫いつけます。天然い草の畳表は、空気の吸収と放出を行う性質があり、空気中のホコリや湿気もどんどん吸収しがちです。その結果、カビが繁殖しやすい温度・湿度・空気(酸素)・養分という条件がそろい、どんどんカビが繁殖します。カビの繁殖条件は、温度が20~30℃、湿度が75%以上、養分がホコリ・湿度などです。

1-2.新しい畳表ほどカビが発生・繁殖しやすい

古く使われた畳ほどカビが発生・繁殖しやすいと思われがちですが、新しい畳表ほどカビが発生しやすい傾向があります。その理由は、新しい畳表ほどホコリや湿気を吸収する能力が高いからです。古い畳は能力が落ちているので、新しい畳ほど吸収しません。よって、新しい畳に交換した後は、より入念なカビ対策が必要といえるでしょう。

1-3.条件によってはカビが多く繁殖することもある

2階の畳よりも1階の畳のほうがカビが発生しやすいなど、条件によってはカビが多く発生し繁殖することがあります。2階は1階よりも高温で湿度が低いため、比較的カビの発生が少なめです。また、カビが多く繁殖しやすい条件を以下にピックアップしてみました。

  • 梅雨・雨季が多湿で高温な年
  • 昼間留守にすることが多く、和室を締め切っている
  • 建物の床下が湿気の要因を持っている
  • タンスなど家具が多く、室内の風とおしが悪い
  • 日当たりが悪い
  • コンクリートマンション系の建物で締め切りが多い
  • 新しい畳の上に敷物をしている
新しい畳ほどカビが生えやすいんですね。
はい。水分を多く含んでいるのでカビが生えやすいでしょう。

2.畳にカビが発生したときの対処法

畳に黒ずみなどができた場合は、カビが発生しすでに繁殖している可能性があります。もし、カビが発生したときは、どのように対処すればいいのでしょうか。

2-1.軽いカビの場合は掃除機→から拭きのくり返し

畳の表面をさわるとカビが発生しているのが分かる程度の場合、比較的軽めのカビなので天気の良い日に窓を開けて換気しましょう。そして、畳目に沿ってゆっくりと掃除機でカビを吸い取り、から拭きをします。これを4回程度くり返すことで、カビている部分を除去できるでしょう。掃除機を使う場合は、なるべくファンでカビの胞子が舞わないよう手で持ち上げてゆっくりとかけることがポイントです。

2-2.重度なカビの場合は畳を室外に出す

畳全面に5mm程度の黒ずみができている場合は、すでにカビが大量発生し繁殖している状態です。重度な状態なので、天気の良い日に畳を室外に出しましょう。そして、ホウキ・掃除機を使ってカビを吸い取り、から拭きをします。1日だけでは十分にカビを取り除くことができないので、3~4日程度天日干しをしてください。カビは熱と乾燥に弱い特徴があるため、太陽の光で熱を与え乾燥させます。ただし、天日干しをするときは畳表が日焼けしないよう、畳表面を裏返すようにしましょう。

2-3.エタノールを使う掃除方法

軽度なカビを除去する場合は、エタノールを使う方法もあります。エタノールを使用する掃除方法には、ゴム手袋・歯ブラシ・掃除機・ぞうきんまたはタオルを用意してください。主な方法は以下の手順となります。

  1. カビの部分にエタノールをスプレーする
  2. 歯ブラシなどで表面を軽くこする
  3. カビがポロポロと取れ始めたら掃除機で吸い取る(吸引力は中)
  4. カビ菌を除去した後は、もう1度アルコールをスプレーし除菌する
  5. 乾いたタオルでから拭きして完了

上記の作業を終えた後は、必ず掃除機のゴミ取りパックを交換してください。パックの中には乾いたカビがたくさん入っているので、そのまま使うと空気中にカビの胞子が舞ってしまいます。

2-4.カビが取れないときは無理をしない

自分でカビを取り除くことができないときは、無理をせずに専門業者へ相談するか、新調の畳に交換しましょう。よくありがちなのが、ゴシゴシと力を入れて拭き取ることです。無理をしてしまうと畳が傷んでしまい、逆にカビ菌が広がってしまいます。また、カビが取れないからと放置をするのもNGです。カビを放置すると繁殖し続け、和室がカビまみれになってしまうでしょう。アレルギー症状や喘息を引き起こすきっかけになるので注意してください。

畳のカビは早めの対処が大切なんですね。
はい。時間がたつほどカビの処理は大変になります。

3.やってはいけない畳の掃除・手入れ方法

掃除の仕方によっては、畳を傷つけてしまう恐れがあります。ここでは、やってはいけない畳の掃除と正しい手入れ方法を解説しましょう。

3-1.掃除機を畳の上に置いてかけない

フローリングで使うときと同じように、掃除機を畳の上に置いてかけるのはNGです。掃除機の排気で床面に溜まっているホコリやカビの胞子が空気中に舞い上がってしまいます。また、掃除機の重さで畳が傷ついてしまうこともあるので、手で持ち上げて使うようにしましょう。掃除機は1畳につき、およそ40~60秒ほどの時間をかけるのが理想的です。目に沿って掃除機をかけるようにしてくださいね。

3-2.ぞうきんで水拭きしない

畳に水拭きは絶対にしてはいけないことです。前述したように、畳に使用されているい草は湿気を吸いやすい性質があるため、水拭きしてしまうとその水分を吸い込んでしまいます。カビが好む湿度になってしまうので水拭きではなくから拭きが基本です。どうしても水拭きしたいときは、固くしぼったぞうきんで軽く拭き、その後からしっかりとから拭きをするといいでしょう。

3-3.熱湯は使わない

カビは熱に弱いといいましたが、畳に熱湯を使うのはNGです。熱は与えることができても、水分まで与えることになるため、逆にカビを繁殖させてしまいます。熱を与えたい場合は、直射日光を避けた場所で日陰干しをするといいでしょう。

3-4.日ごろの手入れが重要

日ごろの手入れは、畳のカビを抑制することにつながる大切なことです。基本的なことですが、ホコリや汚れはカビ菌の栄養分になるため、こまめな掃除で栄養分を取り除きましょう。まずは、部屋の換気をして、風とおしをよくします。風の通り道を作ることで、室内に浮遊しているカビの胞子を外へ逃がすことができるからです。それから、掃除機をかけてホコリの汚れなどを吸い込みましょう。

畳は水拭きしてはならないんですね。
はい。水分は畳の大敵です。

4.畳のカビを予防するポイント

カビを除去した後は、再び発生しないように予防することが大切です。ここでは、畳のカビ予防で押さえておきたいポイントを紹介します。

4-1.湿気が溜まりやすい時期は風とおしをよくする

カビが好む湿気は、梅雨時期や雨季が続いた日に高くなります。そのため、雨が降っていない日はこまめに窓を開けて、風とおしをよくすることがポイントです。雨の日はエアコンの除湿機能または除湿機を活用するといいでしょう。雨の日に窓を開けると、新しい畳ほど湿気を吸収してしまうので開けないようにしてくださいね。

4-2.畳下面の防湿対策を徹底する

1階に畳がある場合、建物の床下から湿気が入り込むケースがあります。そんなときは、畳下に防湿シートをしくなどして、防湿対策を徹底してください。防湿シートをしくだけでも湿度をうまくコントロールすることができ、カビの発生と繁殖を抑えることができます。ただし、素人では難しいところがあるため、畳店に相談したほうがいいでしょう。

4-3.日々の手入れと年2回の大掃除を心がける

前述した日々の手入れはもちろんのこと、年に2回は大掃除を行いましょう。大掃除は畳だけでなく、押し入れやタンスの裏側に積もっているチリやホコリを除去してください。また、和室にはなるべくタンスなど家具を置かないようにしたほうがいいですよ。家具など物がたくさんあるほどホコリが積もりやすく、湿気も溜まりやすくなります。特に、畳の上にカーペットをしくことはおすすめしません。

4-4.新しい畳に張り替える

カビを掃除したけど、どうしても気になるという方は、新しい畳に張り替えるといいでしょう。新しい畳に張り替えれば、カビ対策だけに集中できます。新しい畳ほどホコリや湿気を吸収するので、カビが繁殖しやすい条件を少なくすることが大切です。

湿気を取り除くことが畳のカビ予防には大切なんですね。
はい。定期的に畳をあげて風を通しましょう。

5.カビがひどい場合は畳替えがおすすめ

カビがひどい場合に行う畳替えは、どのような方法があるのでしょうか。畳の処分方法などについても一緒に解説します。

5-1.畳の交換方法

畳の交換は、専門業者へ依頼するケースがほとんどです。自分で張り替えることもできますが、きちんと交換しなければ畳が傷んでしまうので注意しなければなりません。基本的に、張り替えは業者へ依頼したほうがいいでしょう。業者へ依頼する際にかかる費用は、1畳あたり2,000円~が目安です。しかし、業者や畳の種類・面積で異なるので事前にしっかりと確認しておきましょう。どのような方法で交換するのか、どんな畳を使用するのか細かくチェックすることが大切です。

5-2.不要になった畳の処分方法

要らなくなった古い畳は、畳屋に処分してもらうケースが一般的です。交換を依頼した業者がそのまま回収してくれることもあるでしょう。交換と処分が同時にできるなら、そのほうが時間と手間をかけずスピーディーに終わらせることができます。ほかには、不用品回収業者に引き取ってもらう・可燃ゴミまたは粗大ゴミとして回収してもらう方法などです。自治体で処分する場合は費用が無料~数百円とお得ですが、業者へ依頼する際は数千円かかるので見積書を確認しましょう。

5-3.フローリングにリフォームするのも手段の1つ

畳の手入れが面倒・カビを気にするのが嫌・手間をかける時間がないという方は、和室を洋室にリフォームするのも手段の1つです。ただし、洋室にリフォームしたからといって完全にカビとおさらばできるわけではありません。部屋・物件・環境の都合上、湿気が多くカビが生えやすくなることもあります。リフォームにもお金がかかるので、業者に相談してから決めたほうがいいでしょう。

畳替えをすることも大切なんですね。
はい。10~12年に1度は畳替えを行いましょう。

6.畳のカビに関してよくある質問

畳のカビに関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.カビキラーなどカビ取り剤を使用するのはダメなのか?
A.市販のカビ取り剤を絶対に使用してはいけないわけではありませんが、畳には使わないほうがいいでしょう。カビ取り剤を使った結果、畳が変色したり傷んだりしてしまうことがあります。カビ取り剤を薄めれば効果があるかもしれませんが、濃度の調整が難しいのが現実です。また、畳は直接肌に触れる場所なので、小さな子どもやペットがいる家庭では使用を避けたほうがいいでしょう。カビ取り剤だけでなく漂白剤を使用するのもNGです。

Q.畳を除菌する方法は?
A.除菌効果があるアルコールスプレーはもちろん、どの家庭にもあるお酢でも除菌ができます。お酢を10倍程度薄めた水にぞうきんを浸し、固く絞ってから水拭きをしてください。ただし、畳に水拭きは不向きなので、すぐに乾いたぞうきんで水気を拭き取ることがポイントです。お酢を使った除菌方法はあくまで除菌だけ、防菌ではありません。すでにカビが発生している状態で使っても意味がないので、その点を踏まえて使いましょう。

Q.黒カビに効果的な掃除方法は?
A.畳が黒ずんでいる場合は、その場所に重曹(粉末タイプ)を振りかけてください。粉末を振りかけた後に消毒用アルコールを吹きつけ、歯ブラシなどでやさしくこすります。重曹は環境と体にやさしい自然素材でできているので、小さな子どもがいる家庭でも安心して使えるでしょう。そして、カビを除菌し終えたら、カビの生えていた部分に消毒用アルコールをもう1度吹きつけて、から拭きしてください。そうすることで、カビの発生と繁殖を抑えることができるのです。

Q.畳にできたカビのシミを取る際におすすめの洗剤は?
A.自然素材やマットレス・カーテンなどに使える「カビホワイト」がおすすめです。カビホワイトでカビを覆うようにスプレーし、30分ほど放置した後に水拭きで軽く拭き取りから拭きで仕上げましょう。畳はデリケートなので強い洗剤を使うことはできませんが、カビホワイトなどやさしい成分が含まれているものなら問題ありません。不安な方は、目立たない場所にスプレーしてから変色がないか確認してから使うといいでしょう。

Q.和室を寝室にしている場合の注意点は?
A.布団など寝具類もこまめに手入れしてください。布団は寝汗を吸収しているので湿気が溜まりやすく、発生したカビ菌から胞子が畳の中に入ってしまう恐れがあります。こまめに天日干しをしたり、布団乾燥機で除湿したりするなど、布団の湿気を逃がしましょう。また、畳の上に直接布団をしかず、畳と布団の間にすのこを敷いて湿気の逃がし道を作るといいですよ。和室を寝室にしている場合は、布団をしきっぱなしにしないように注意してくださいね。

まとめ

畳のカビは、畳全体に発生するのではなく畳表に発生するケースがほとんどです。特に、湿気が溜まりやすい6〜9月ごろにかけて黒ずみが発生しやすくなるでしょう。カビが繁殖しやすい温度・湿度・空気と条件がそろえば、どんどんカビ菌が広がってしまうので、条件がそろわないような工夫が必要です。定期的に行う掃除はもちろんのこと、換気や畳下面の防湿対策が重要なポイントとなります。また、カビが全体に広がっている場合は状態が悪化しているため、新しい畳に交換したほうがベストな選択でしょう。